坂道では自転車を降りて

「受験が終わったら、ちゃんとしたデートをしよう。」
「うん。」
「どこに行こうか?」
「公園。緑のいっぱいの公園。」
公園って、いつもと変わらないじゃん。
「遊園地とかは?」
本格デートの定番だ。
「乗り物は酔うから苦手。」
「そうなのか。」
「海も好き。」
「そうだね。一人でも行くくらい好きなんだよな。」
「もう!一人より神井くんと2人の方がずっと楽しいよ。きっと。」
「神井くんは?遊園地に行きたいの?」
「いや、俺もジェットコースターは苦手。怖い。」
「だったら、遊園地もいいな。面白そうだ。」
「言うと思った。笑」

 1つ、また1つ、2人の思い出と記念の品が増えて行く。今はそれが何よりも楽しくて嬉しい。あれもこれも。世の中の恋人どうしがしている事を、端からやり尽くしたい。試験が終わったら、ちゃんとデートしよう。いつもの公園じゃなくて、電車に乗って、ちょっと遠くの広い公園へ行こう。そうだ。彼女に弁当を作ってもらおう。どんな味だか正直不安だけど、それでもきっと楽しいはずだ。朝から夜まで一日遊んで、一緒に昼寝して。彼女が絵を描いて。それから舞台のチケットをとって一緒に見に行こう。美術館や博物館にも連れて行ってもらおう。夏には可愛い水着を買って海に行くんだ。
 俺達は受験が終わったらやりたい事を飽きる事なく話しつづけた。

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