坂道では自転車を降りて
「なんか、飲み物買って来るよ。何がいい?」
「あー、、、、そうだな、水。」
「水ね。」
「これ、財布。」
財布から金を出すのも面倒らしい。財布ごと渡された。

 女子の財布って普通、異様にでかくてごてごてしてたり、もっと可愛らしかったりすると思ってたが、無味乾燥な皮の小銭入れが、ポケットからするりと出て来た。色が辛うじてキャメルだが、これが黒だったら完全にオヤジの財布だ。こんなの使ってる女子もいるんだ。

 自動販売機には珈琲やお茶も売ってる。水と言ったから水なんだろうけど、貧血ならカロリーとらなくて良いのかな?オレンジジュースがあったので、それも買って戻る。

「オレンジも売ってたよ。血が増えそう。飲む?」
「今は水にする。せっかく買って来てくれたのに、ごめん。今甘いもの採ると、余計にお腹が痛くなるんだ。」
「。。。。」
「貧血はもう収まった。腹痛は、どうせ待っても収まらないから、これ飲んだら帰るよ。ごめん。開けて。手に力が入らなくて。」
 ペットボトルが開かないなんて、そんなに具合悪いのか。水のボトルを開けてやって渡す。彼女は受け取って一口飲んだ。
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