甘い恋の賞味期限
「餌付け……?」

 千世が千紘にしてあげている中で、1番好印象を与えているのは、ホットケーキだ。千紘が自分をお母さんにしたい理由も、美味しいご飯を食べられるから、だし。

(この子……食べ物をくれる人なら、誰にでも懐くんじゃ……)

 急激に、目の前の生意気小僧が心配になってきた。思えば、千世の母親について来たのだってホットケーキーー食べ物が原因だ。

「知らない人にお菓子あげるって言われても、ついてっちゃダメだから!」

「言われなくても、知ってるよ。親父もよく言うんだ」

「……ついて来ちゃってるじゃない」

 じゃなきゃ今、君はここに居ないんだから。
 千世はガックリと机に突っ伏す。

「……君、またうちに来るの?」

「おう! ケーキ食いたい。クリームに、チョコに、チーズ!」

「……スマホ貸して」

 二度ある事は三度あると言うし、千紘は今度も来るのだろう。
 千紘から子ども用スマホを受け取ると、自分の番号を登録する。

「今度から、来る時はこの番号に連絡して。迎えに行くから」

「いいのか!?」

「心配だからね……」

 帰りは送って行くからいいが、行きは千紘ひとり。
 この事実を知ってしまった以上、知らないふりはできない。

「電話してもいいか?」

「いいけど、昼間は仕事してるから電話には出れないわよ」

「え〜」

「一日中好き放題できる5歳と違って、25歳の社会人は召使いのごとく働かなきゃいけないのよ」

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