甘い恋の賞味期限
 ひとり娘である千世を、ふたりはのほほんと育ててきた。
 いつだって、千世の意見を尊重してきたのだ。
 だからこそなのか、千世はとてもたくましく育った。




*****

 帝国ホテルのロビーで、史朗は見合い相手が来るのを待っていた。史朗の予定では、見合いはお昼前に終わらせて、帰りにケーキでも買って帰るつもり。
 千紘はケーキならなんでも好きだし、店のケーキを1種類ずつ、すべて買って帰ろう。

「ケーキくらいで、機嫌が直ればいいが……」

 単純なくせに、意外と根に持つタイプなのだ、あの息子は。

「史朗さん、少し髪が乱れているわ。ちゃんと鏡の前で見てきた?」

「見てきましたよ。いろいろ、探し物とかしてたので」

 とか言いつつ、史朗はそこまで自分の容姿を気にかけてはいない。最低限、清潔にしていれば問題ないと思っている部分もある。

「相手のお嬢さん、お名前は和音さんとおっしゃるそうよ。大学を卒業して、今は親戚の会社で働いているそうなの」

「そうですか」

 見合いに挑んだのはいいが、ハッキリ言って、相手には一ミクロンも興味がない。重要なことは、千紘が気に入るかどうか。

「それからね、子どもは好きだそうよ」

「口ではなんとでも言えますよ」

 今まで知り合ってきた女性も、最初は子どもが好きだと言っていた。
 だからこっちも、色々考えた末に千紘と会わせるのだが、全員がことごとく笑顔を引きつらせていく。

「そんな風に言わないで。千紘は甘え方を知らないだけよ。お母さんがいれば、性格も丸くなるわ」

「性格が悪いことは、お母さんも認めているんですね」

 史朗は盛大なため息を漏らす。
 千紘を育てたのは、他ならぬ自分だ。千紘の母親とは、千紘が産まれるのと同時に離婚した。

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