甘い恋の賞味期限
 なんて分かりやすい子なんだろうか。
 それを、ちょっとだけ可愛いと思ってしまうとは。

「もしひとりで食べるなら、2回に分けて食べなさい。いいわね?」

「へーい」

 この返事、少しばかり信用できない。
 だが、監視する程のことでもないし。

「それから、夏も終わって寒くなってきたし、上着のひとつでも羽織って来なさい」

「千世は口うるさいな。ハッ! これが母ちゃんの口うるささってやつか? ショー真顔言ってたんだ。母ちゃんはスッゲー口うるさい、って」

「……私は君のお母さんじゃないから」

「また君って言いやがった!」

 ポカポカと殴りかかってきたので、千世はヒラリと余裕持って避けてやった。千紘は悔しそうだったが、子どもは力加減ができない。特に、男の子は力があるし。
 まともに相手をしたら、自分が怪我をしてしまう。

「ほらほら、さっさと帰んなさい」

「おう! 千世、次はケーキ作ってくれよな! じゃあなっ」

 千紘は元気良く駆け出し、千世はそれを見送る。

「本当に、デカいマンションよね」

 改めて見上げれば、首が痛くなるような高さだ。家政婦も雇っているし、千紘の父親は本当に裕福なようだ。
 だが、そんな子どもを餌付けしている自分を、父親は知っているのだろうか?

「……ま、いっか」

 他所様のお宅に、これ以上介入してはいけない。
 でも、そう思うなら尚更、千紘と関わらない方がいいのだろうけど。
 千世は苦笑しながら、ケーキの本はどこへしまったのか思い出していた。

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