甘い恋の賞味期限
「じゃあ、買いに行こう」

「3人でか?」

 千紘が目に見えて期待している。

「買いに行くくらい、私ひとりで行ってきます。ここからスーパー、近いですし」

 一緒に外出なんて、冗談じゃない。会社から離れているとはいえ、どこで誰が見ているか分からない。専務と一緒な所を見られでもしたら、会社で誰に何を言われるか……。

「3人で行こうぜ! な、親父」

「まぁ、構わないが……この格好ではまずいか」

 史朗は着替えのため、自分の部屋へ行ってしまう。

「なんで着替える必要が……」

「ばあちゃんに言われてるんだって。誰かと外に行く時は、きちんとした格好で出かけろ、って」

「へぇ……」

「親父、かなりだらしないんだぜ。すぐもの無くすしな。親父の部屋、脱ぎぱっなしの服でいっぱいなんだ。見に行くか?」

「行かない」

 即答したら、千紘はつまらなそうな顔をした。
 しかし意外だ。詳しくは知らないが、社内での史朗のイメージとはかけ離れている。噂では、綺麗好きを超えて潔癖性なのではないか、とまで言われていたのに。

「なぁ千世。ついでに晩飯も作ってくれよ」

「君は私を、飯炊き係だとでも思ってない?」

「なぁなぁ、ケーキはいつ食べていいんだ?」

 無視ですか。無視なんですね。
 千世はため息をつき、再度、冷蔵庫の中を確認する。

「なんにも無いわけじゃないけど……冷凍庫と野菜室は……」

 すっからかんでは無いのだ。ある程度は入っている。
 だが卵が無かったり、肉や魚も無かったりで、少し変わった冷蔵庫だとは思う。
 あと、野菜があんまり入っていない。


< 77 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop