甘い恋の賞味期限
「君、野菜食べてる?」

 この野菜の少なさから察するに、日頃から食卓に出ていないのではないかと心配にさせる。ひき肉などはないが、ハムやソーセージはあるようだから、お肉の類は頻繁に食べていそう。

「……静子は食べなくてもいい、って」

「生憎だけど、私は静子さんじゃないのよ。だから、食べろ、って言うわ」

 冷蔵庫を閉め、千世は腰に手を当てて千紘を見下ろす。

「……まずいもん」

「お子様ねぇ」

「子ども扱いすんなっ」

「野菜の良さが分からないうちは、味覚も子どものままよ」

 わざとバカにしたように言えば、千紘は分かりやすいくらいに頬を膨らませ、不機嫌になる。

「……く、食えるし。野菜くらい」

「ホント? じゃあ、オムライスにたっぷり入れるわ」

「ーー!」

 瞬間、千紘が泣きそうな顔になる。泣きたくなるほど、野菜が嫌いなのか。
 千世は子どもの頃から好き嫌いなんて無かったから、この気持ちは分からない。

「た、食べたら、指輪返してくれるか?」

「……そう来たか」

 思っていなかった返しに、千世は少し考える。

「……返してもいいよ。けど、私は君のお父さんと結婚はしない」

「なんでだよ? ばあちゃん言ってたぞ。親父はじょーけんは良いんだ、って」

 確かに、結婚相手には十分すぎる条件の持ち主だ。バツイチ子持ちがかすんでしまうくらいの。
 だがそれでも、千世は史朗と結婚するつもりも、千紘の母親になるつもりもない。

「君のお母さんになる人は、君のお父さんのお嫁さんにもなる。君が私を気に入っていても、お父さんはどう?」

「親父は……」

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