甘い恋の賞味期限
*****

 心晴と一緒に訪れたのは、帝国ホテルにあるバーだった。食事は好きだが、お酒はそこまで好きじゃない。
 だから、こういった場所にはあまり来ないので、落ち着かない。服も靴も、新しいものだし。

「何飲む?」

「俺はビール。槙村さんは?」

「炭酸水」

 千世はあからさまに、乗り気じゃない。
 それを感じ取っているのか、相手の男性ふたりは苦笑いを浮かべる。

「ちょっと! 嘘でもいいから、もう少し愛想良くしてよ」

 心晴が小声で、千世の態度に文句を言う。

「帰りたいのよ、私は。せっかくの休みだったのに……」

 そもそも、心晴は恋愛に特別積極的と言える性格じゃない。
 それなのに、今夜はやたらと積極的だ。自分のためじゃないのは分かってる。

「お節介」

「なんとでも言って。いい相手じゃない。医者よ?」

 千世は改めて、自分の向かいに座る男性を観察する。年齢は30歳。歯科医で、5年以内に開業するつもりらしい。見た目も悪くないし、物腰も柔らか。
 それなのに、女性と長続きしないらしい。

(何か、長続きしない理由があるのよね、多分)

 相手の欠点を探してしまうのは、早くこの場を去る理由を見つけるため。自分には合わない。ここが嫌い。
 そう言えば、去る理由になる。

「よかったら、ペアで飲まない?」

「ちょっ」

 心晴の提案に、千世は抗議しようと立ち上がる。
 けれど、心晴は聞き届けるつもりはないようだ。男友達と一緒に、席を離れてしまう。

「……はぁ」

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