絶対主従関係。-俺様なアイツ-
「見早、ごめんなさい〜」

 しゅんと肩をすくめる仕草は、私の胸までキュンと打つ。


「愛子、大丈夫?」

「な、なんとかね」

 それまでぼーっとしてしまっていたあたしの元へ、慌てたようにやってきた小町が手を差し伸べてくる。

少し大きな手に引かれるように立たされ、パタパタと裾を払う。


 妙にチクチクと感じる背中の痛み──ではなく、視線。


 こっそり振り返ってみると、あのぶつかってきた女の子だ。

うっとりという言葉がぴったりで、今にもその大きな瞳がとろけ出しそうだ。


 ……アレ?なんかしたっけ?


「りりか様!?」

 あたしたちの緊張を察したように、黒髪の女の子が声を張り上げる。


「きゃ、またヤっちゃった!ごめんなさい!」

「え、あっ、いや……」

 ペコペコ頭を下げる姿は、さながらハムスター。

思わず目が合って、二人で「プッ」と吹き出しちゃった。


「りりか様、行きますよ」

「あ、はい。先ほどは本当にごめんなさいね」


 そういって押し出されるようにして、二人はそそくさと消えていってしまった。


 嵐が過ぎ去った廊下は、やけに静まり返ったように感じる。


「まさにご令嬢ってかんじだね……」

「ホント。おまけに可愛かったよね」

 脱力感の支配から抜けきれない小町には、きっとあのきらびやかな世界にまだ慣れていないからだろう。

かといって、私だって慣れているわけじゃないけど。


「世の中には、イヤミのないお金持ちもいるのねぇ」


 思わずつぶやいた言葉に、小町はただ笑っていた。


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