絶対主従関係。-俺様なアイツ-
 さっきのカッコイイ男。

同じ学校で同い年の藤堂家の人間は、一人しかいない。


「もしかして、さっきの彼は……」

 引きつった笑顔を貼り付けながら救いを求めるように晴海さんを見上げる。

すると、すこし驚いた後「ご存知でしたか」と嬉しそうに笑っていた。



「ええ、藤堂帝さまでございます」


 暑い熱い夏の日差しに、あたしは眩暈と不安を覚えた。




 父は何も言ってくれなかった。

ただ「行けばわかる」の一言だけだった。


 まさか、あの藤堂家の使用人になるなんて…!


 ブチブチと呟いた小言は晴海さんには聞こえなかったみたいで、一つの扉を押し開けてくれた。


「こちらが愛子様のお部屋です」

 晴海さんが通してくれた部屋は、つい昨日まで住んでいた部屋の2倍くらいの広さがあった。

ギュウギュウと、大人二人が暮らしていたアパートなんか目じゃない。


 だって、この広さがあたし一人のものなんだから。


「うっ…わぁあ」

 清潔感のある空気にパリパリのシーツがかかったベッド。

不謹慎にも、あたしはときめいてしまった。



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