兄妹ものがたり
「変わることは確かに大事だ、でも変わらないものがないと、続かないこともある」
信号が変わって、ようやく先輩の手が離れていく。
「小向も永田も変わったかもしれない、でも変わらないお前がいるから、お前らは今でも三人なんだろ」
走り出した車の中、吸い終えた煙草を携帯灰皿に押し付けて先輩が窓を閉める。
一緒に閉められていく助手席側の窓を見つめれば、こちらを見つめ返す自分の顔が写っていた。
学生の頃よりも少しだけ大人になった、自分の顔。
「おれ、今のままでいいってことですか」
ポツリと漏らした声はまるで自分のものではないかのように頼りない。
再び訪れた沈黙の車内に、洋楽のメロディーが響き渡る。
先輩からの答えはないが、チラッと伺った横顔が微かに微笑んでいるように見えて、不思議と心が軽くなった。
本当はずっと不安だったのだ。
変わっていく仲間たちの中で、自分一人が取り残されてしまったようで…自分だけが前に進めていないようで、苦しかった。
そんな誰にも言えない重たい気持ちが、先輩の言葉で驚く程あっさりと流れ去っていく。
フリーズしていた脳が動き出すと、自然と笑みもこぼれ落ちた。