しあわせのかたち
少し歩くと、そこには……


「……主任?」


正確には、碓井主任の車が歩道に寄せて停まっていた。

状況がつかめない私を無視し、弥生は私を支えたまま碓井主任の車に近付く。

そして、助手席のドアを開け、


「じゃぁ、お願いしまーす!」


弥生は私を助手席に座らせ、ドアを閉める。


「遅いから須賀も送るって、さっき……」


碓井主任は助手席側の窓を開け、弥生に向かって言う。


「私はタクシーを捕まえるから大丈夫です。それより、碧の事、お願いしますね」


弥生は笑顔でそう言った。


「わかった。じゃぁ、須賀も気を付けて帰れよ」

「はい」


弥生の返事を聞くと、碓井主任は窓を閉め、車を発進させる。

私は、状況は掴めないままだった。


「何で……?」

「何が?」


私の問い掛けに、碓井主任は前を見たまま答える。


「いや、“何が?”じゃなくて……。どうして主任が送ってくれる事になっているんですか?」

「あぁ、それね。七海、今日も飲むペース早かっただろ?須賀が心配していたんだよ、“最近、七海の様子がおかしい”って。残業もあったから、最近二人で会えなかっただろ?だから、七海は言わないけど、もしかしたら寂しいんじゃないかって思っていたらしい。で、“七海の事、送ってくれ”って言われたんだ」


弥生が?

仕事だし仕方ないけど、最近会えなかった事は寂しく思っていた。

でも、弥生にそれは言っていない。

だけど、弥生はやっぱり気が付いていたんだ。


「それより、気分は悪くないか?大丈夫?」

「はい、大丈夫です」

「じゃぁ、少し付き合って。帰りはちゃんと送るから」


そう言うと、碓井主任は私の家じゃない方向に進路を変えた。


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