しあわせのかたち
ある日――…


仕事も終わり、残業がない私は同じく残業のない弥生とご飯を食べに行く。


「ねぇ、碧……。もう、落ち着いた?」


弥生は少し言いにくそうに口を開く。


「ん?何が?」

「何が?って……。雄二の事だよ。碧……、あれから何も言わないしさ……」


雄二の事……?


「あぁ……。本当にもうどうでもいいよ。何なら、雄二の存在すら忘れていたくらいだし」

「それならいいんだけど……。碧って、ヘンに気を使って話さないでしょ?“周りに心配掛けたくないから”って。だから、心配だったんだ。別れた後、“平気”って言っていたけど、実はまだ引きずっているんじゃないかって……」


雄二の事は、本当に引きずっていない。

なんなら、今、弥生に名前を出されるまで、忘れていたくらいだから。


「ありがとう。本当に雄二の事は平気なの」


そう、雄二の事は何とも思っていないし、フラれた事を思い出しても平気なんだけど……


「……弥生、あのね。私……、最近、碓井主任の事が気になる、かも……」


私は、最近の気持ちの変化を話すと、弥生は目を大きく開き驚く。


歓送迎会の日、弥生に冗談で勧められた。

その時は、いくら碓井主任がカッコいいとはいえ、社内恋愛は嫌だと思ったし、まさか自分が碓井主任の事を好きになるなんて思っていなかった。

ただ、仕事が出来て、話しやすい上司が来た

それくらいにしか思っていなかった。


だけど――…


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