それでもあなたと結婚したいです。
千春さんの指が唇をゆっくりなぞる。
「あ…千春さぁん……あの、あの……あんまり急に無理すると身体に悪いかも知れませんよ!……だから、あの……………」
「花枝さんムード無いですよ?……ちょっと黙って……」
「…ん…………んん……」
柔らかく薄い唇でことごとく塞がれる私の唇。
「やっぱり悔しいなぁ…………悔しいから、俺ので記憶を塗り替えさせて。」
次から次へと落ちてくる、彼のキスの雨に私は溺れるだけ溺れさせられて、気づいた頃には空が白み始めていた。
「千春さん…。私、今日てゆうか昨日、いっぱい料理作ったんですよ。」
「えっ。そうだったの?」
ぐぅ~~~~~~
その時、私のお腹だけが音を上げた。
「フフッ。」
「ひどいーーーーーー!!何も食べずに、千春さんをずっと待ってたのにーーー!」
「ごめん、ごめん!俺も想像したらお腹空いてきた。」
「じゃあ、今から仲直りごはん食べる?」
「うん!」
急いでエプロンを着けて鍋に火を入れた。
「仲直りごはん、何を作ってくれたの?」
「煮込みハンバーグにグラタン、生春巻にコーンポタージュスープ。エビフライは揚げなきゃだから、今夜に回すね!」
「デザートは………」
『エッグタルト!!』
二人で同時に紙袋を見せる。
「えっ!同じ?」
二人顔を見合わせて笑う。
「じゃあ………、仲直りごはんの前に、仲直りデザートは?」
千春さんがエッグタルトを一つ取り、私に食べさせてくれる。
「ん!美味し~~い!!これが千春さんの大好きな味なんだ!!」
「俺も食べていい?」
「いっぱいあるからどんどん食べて!でも、ごはんの分は開けといてくださいね!」
「チュッ………」
「大丈夫!これならいくらでも食べられる。」
ペロリと自分の唇を舐めながらまた、千春さんの腕に囚われる。
「ちょっと!千春さ~~ん!!今日はもう、終わり~~!!」
心の底から愉しそうに笑っている千春さんを見て、私は嬉しくて仕方がなかった。
だって、何もない所から私達は自分の力で、確実に一歩踏み出せたのだから。