君色ドラマチック
「もしもし?」
『おう、どうした?』
「どうしたじゃないわよっ、あのねえ……」
溜めていた文句をぶつけようとした瞬間。
受話器の向こうで、がちゃりとドアが開くような音がした。
『お待たせしました!あ、ごめんなさい……』
女の人の声だ。誰?
『大丈夫。で、どうしたの?急用だった?』
珍しく、焦ったような結城の声がする。
明らかに、早く切りたがっているような。
「あ……ううん、ごめん。今度でいいや」
よく考えてみれば、桜井さんの言葉をそのまま伝えるわけにはいかないじゃない。
私以外のパタンナーに仕事を依頼しないで。
ずっと今の会社にいられるよう、裏切らないでいて。
そう懇願しているみたいだから……。
「あの、まだ仕事だった?」
聞いてみると、結城は不自然に、いつもはしない咳払いをした。
『そうだよ。じゃあ、切るから。また明日』
私の返事を待たず、通話は途切れた。
仕事って……こんな夜まで、相手のところにいるわけ?
そもそも、いったいどういう仕事相手なの?