イジワル上司の甘い求愛
「ほら、いくぞ。チャキ」
浦島さんの言葉のせいでその場から動けなくなっている私を、先を歩いていた浦島さんが仕方ないというような仕草で戻ってきた。
私の胸の鼓動が一気に加速する。
ねぇ、浦島さん?
また私のこと『チャキ』って呼んでますけど。
そのせいで私は、心臓が痛いくらいに音をたてています。
「うっ、浦島さん⁉」
「ん?」
動揺したせいで声が上擦った私を覗き込むような姿勢で、浦島さんが首を傾げる。
「この間からどうして、私のことをその……、『チャキ』って呼ぶんですか?」
高校の頃のニックネームを浦島さんは私がこの会社に就職してから一度も呼ぶことなんてなかったのに。
東京では、誰も私のことを『チャキ』って言わないのに。
どうして浦島さんは……
今さらどうして……。