イジワル上司の甘い求愛

今夜の浦島さんはやっぱりどこか変だ。


「ほら、続きは店でゆっくり話そう」

胸の鼓動が激しく波打って、息苦しささえ覚えた私の手を、浦島さんが握って歩き出す。

「ちょっ、ちょっと……」

驚きの声をあげた私には聞く耳を持たず、浦島さんは半ば無理矢理路地裏の通りをグイグイと進んでいく。


今さら冷静に考えたら、これまでの4年間『犬猿の仲』だった私をいきなり食事に誘ったことだっておかしい。

私をチャキと呼ぶことだって、こうして強引に私の手を握ってバーに向かって歩いていることだって。

やっぱり今日の浦島さんは、おかしい。

これじゃあ、まるでデートみたいだ。


そんな考えが浦島さんに引き摺られながら頭に浮かんできた。

何考えてるんだろう、私。

私は小さく頭を横に振って、浮かんできた想いを否定した。

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