イジワル上司の甘い求愛


浦島さんに『飲みすぎ』だって言われたことを素直に受け止めて、お酒を飲むことを止めておけばよかったと後悔したのは、それから1時間近く経った後のこと。

店を出ると、冷たい雨がシトシトと降っていた。

頭の中はなんとなくはっきりしているんだけど、足元がおぼつかない。
漆黒の雨空を見上げながら、店の軒下に置かれた喫煙用のベンチに腰を下ろす。

私がベンチに座ると、煙草を口にくわえたまま隣に座る形になった浦島さんが少しだけ私にスペースを開けてくれる。

酔っぱらっている私は心地よい浮遊感なんだけど、目の前の浦島さんは呆れて溜息なんかついちゃっている。

溜め息は煙草の煙と混じって、真黒な空に静かに消えていった。


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