イジワル上司の甘い求愛
「そろそろ帰ろう。送るよ」
浦島さんは煙草を吸い終わると、なんとなく立ち上がって浦島さんはこちらを振り返って、笑いながらそう言った。
端正な顔立ちを少しだけ崩して、白い歯を覗かせて。
その笑顔はあの頃の『浦島さん』、ううん『太郎さん』のままで――
あぁ、アルコールのせいだ。
何故だか、急に鼻の奥がツンとして浦島さんがぼやけて見える。
「どうした、チャキ?」
もう、どうして就職して好きだって気が付いてすぐに告白しなかったんだろう。
4年間も浦島さんを避けてきたのだろう。
浦島さんはもうすぐ結婚しちゃう。
私がもっと早く、行動を起こしていれば私と浦島さんの関係は何か変わっていたかもしれないのに……
溢れてくる後悔の想いが湧き上がってくるのと同じように、暖かな涙が頬を伝っているのに気が付くのに時間なんてかからなかった。