イジワル上司の甘い求愛
社長の挨拶が始まって、それをなんとなく聞きながら梨沙や他の同期入社の人たちと会場の隅の方でコソコソ話をしていた時だった。
会場が、というよりステージ周囲が急に騒めきだす。
ステージに背を向けていた私とは違って、向かい側に立っていた梨沙が一気に顔面蒼白になり、ステージを指さして口をパクつかせる。
「ちっ、千晶……!!」
その声は、ワナワナと震えていたから、私は不思議に思いながらゆっくりとステージを振り返って見る。
きっと愕然とするって、こんな時のことを言うんだろう。
振り返った瞬間、私の中でガラガラと一気に何かが崩れ落ちる音が聞こえて、その場に立ち尽くしてしまった。