イジワル上司の甘い求愛
「俺は、チャキと一緒なら罰が当たっても構わないよ」
私に背を向けて、聞こえたか聞こえないかくらいの大きさで浦島さんが呟いた一言はしっかりと私の耳に届いた。
浦島さんの言葉は私の胸を大きくぐらりと揺さぶる。
「太郎さんっ!!待って!!」
こんな時、無意識に呼び止めようと出た言葉が、『浦島さん』ではなくって『太郎さん』だなんて……
無意識だったのは言葉だけじゃない。
浦島さんの動きを制しようと知らず知らずのうちに私は浦島さんのスーツの裾をギュッと握りしめていた。
だけど、浦島さんは振り向いてはくれなくって、その表情はよめないまま。
シトシトと降り続く雨が私たちを濡らしていく。