イジワル上司の甘い求愛
八重歯の印象的な先輩の声にすぐに反応した浦島さんが、人ごみをかき分けるようにしてこちらに近づいてくる。
「太郎、遅いぞ」
「ごめん、仕事終わりで電車に飛び乗ってきたけど、乾杯には間に合わなかった」
星川先輩の声に、『太郎さん』と呼ばれていた高校時代を彷彿とさせる笑顔で頭を掻きながら近づいてくる浦島さんは、会社で知っているはずの印象とはなんとなく違っている。
「じゃ、じゃあ、私は、これで……」
近づいてくる浦島さんから逃げ出すように、場所を移動しようとしたというのに……
「あっ、待って、待って!!なぁ、太郎、この子覚えてる?俺たちが3年の時、1年のマネージャーだったチャキ」
あぁ、もう、星川先輩……
星川先輩が私の行動を制止しながら、浦島さんにそう告げた。