イジワル上司の甘い求愛
「チャキが泣きそうな顔してたから」
手を離したかなえちゃんがこっそりと耳打ちしてくれる。
「ありがと」
連れ出してくれたのはかなえちゃんなりの優しさ。
連れ出してくれて有難いって、助かったって思っている私はやっぱり浦島さんから逃げていて、臆病者なんだって心が苦しくなる。
『私……』
とっさに出た一言。
かなえちゃんの言葉に打ち消されてしまった言葉。
だけど私あの時、何を言おうとしたのだろう。
浦島さん、私、どうしたいんだろう。
モヤモヤとした気持ちのまま映った本多先生との写真は、顔を引きつらせたまま無理矢理作った笑顔の私がピースサインをしてかなえちゃんと並んでいた。