イジワル上司の甘い求愛

◇◇◇

「今年はお見合いでもしようかな」

車通りの少ない河原沿いの道を歩きながら、独り言をつぶやく。

白い息がお正月の真っ青な空に昇ろうとするのを、風が吹き散らした。


あの日、本多先生の還暦を祝うパーティーは本多先生の涙ながらの熱いスピーチと万歳三唱で大盛り上がりのなかお開きとなった。

私は時折浦島さんの姿を見つけながらも、それ以上近づくことも出来ずに過ごした。

時折、浦島さんの居る方から視線を感じる気がしたけれど、きっと気のせいだってことにして気が付かない振りをした。

浦島さんと話をするのが、真実を知りたいと思う反面、知ることが怖かった。


それから、実家で何をすることもゴロゴロと過ごしてお正月を迎えた。

あまりにだらだらとしていたせいで、『少しくらいは外に出なさい』と小学生の子供みたいな怒られ方をしてしまった私は、仕方なく地元の神社に一人で初詣にやってきた。

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