イジワル上司の甘い求愛


週末を挟んで、浦島さんは急遽出張になったらしく、冬休みまでの残り数日を出社することはなかった。


「きっと玲美さんと海外よ」

そんな噂が部署だけでなく、社内全体に渦巻いていた。

電話かけてみようかな……。


何度もそう思っては見たけれど、ただの後輩でしかない私が聞くことなんて何もない。

それよりも浦島さんのことを思い出せば、あの強烈なキスが鮮明に思い返されて心のささくれが痛みを感じる。


『有瀬さん、冬休み地元帰る?俺もスケジュールあわせて帰ろうかな。行き帰り一緒の方が楽しそうじゃん?』

数週間前、本気とも冗談とも分からないテンションでそんなことを言っていた浦島さん。

私は密かに楽しみにしていたのだけれど、そんなこともどうだっていいんだろうな。



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