イジワル上司の甘い求愛
「仕事でって……」
浦島さんの言っていることの意味が分からず、私は首を傾げながら浦島さんの発言を反芻してみる。
だけど、やっぱりその意味は分からない。
「それってどういう意味ですか?」
思い切って尋ねたタイミングで、駅前の交差点が青に変わってしまって私の声は雑踏の中に消えてしまう。
聞こえていたかどうかなんて分からない。
隣を歩く浦島さんの横顔を見上げたけれど、その表情は変わってない。
私の視線に気が付く様子もなく真っすぐに前を見つめ、浦島さんは駅に向かって歩く。
言葉の意味は気になるけれど、4年間も仕事以外の話をほとんど交わしてこなかった関係のせいで、もう一度質問することも躊躇ってしまう。
仕方ないから私は歩くことに集中することにした。