イジワル上司の甘い求愛
「それじゃあ、また明日」

動けないままでいる私にそう声をかけると、まるで逃げる様に浦島さんは私に背を向けて、歩き出す。

仕事帰りの会社員がごった返している駅で、浦島さんの姿はあっという間に見えなくなってしまった。



帰りの電車に揺られながら、浦島さんの言葉を何度も何度も繰り返して考えるけれど、意味が分からない。


大岩さんに相談してっこと。
私だから任せるってこと。。

それから、困った時には声かけてって言われたこと。


あぁ、一体浦島さんはどうしちゃったって言うんだろう。

頭の中が浦島さんで埋め尽くされてしまっていることに気が付くのに、それほど時間はかからなかった。


きっと、アルコールのせい?
ううん、そうだ。絶対そう。アルコールのせいだ。

私の頭が浦島さんでいっぱいなことも、浦島さんが変な発言したことも。

全部アルコールのせいにしちゃおう。

私はそう思いながら、電車の心地よい揺れに身体を預け、瞼を閉じた。

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