イジワル上司の甘い求愛

「企画部のイケメンエース、浦島智哉 30歳。地元の高校を卒業後、上京して大学の建築学科を首席で卒業し、うちの会社に入社。将来の幹部候補。いくら振られたからって、こんなイケメンエリートに可愛がられるだけでもありがたいっていうのに、千晶はその寵愛を拒否したのよ。もったいない!!」

あいつの経歴をスラスラと唱える梨沙が、冗談とも本気ともつかない批判めいた視線を私におくる。


「もったいないだなんて、私は別にそんなんじゃ……。でも、普通ありえないでしょ?高校の頃の先輩と同じ職場で、しかも同じ部署。この国1億人以上の人口だって言われているのに、こんな偶然ありだと思う?」

本当にありえない。

大きな息を吐きだして、深々と椅子に背を持たれた私に、「アリよ、大アリ」と梨沙の呟きが聞こえてきた。

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