なつの色、きみの声。
◇
目が覚めると、部屋の明るさから、朝ではないことがすぐにわかった。
汗でべったりと肌に張り付くTシャツの不快感よりも、身体中の怠さが勝る。
ぺた、と自分の額に手を当てると、予想通りの熱を感じる。
昨日の頭痛にも納得がいく。
小さく発した声は驚くくらいに掠れていて、紛れもない風邪の症状。
今日が休みでよかった。
汗をかいたTシャツを着替えてから、スマホの電源を入れる。
昨日の夜、わたしがメッセージを送った数分後には碧汰から返信が届いていた。
電源を切ってしまっていたから、その2時間後におやすみと一言追加で送られていた。
ぼんやりとしながら返事ができなかったことのお詫びを送り、布団から起き上がる。
休みの日の昼食は自分で用意しているけれど、その一手間がしんどいなと思いながら、冷蔵庫を開ける。
タッパーに入った味噌汁を器に移して、余っていたお米で小さなおにぎりを作った。
チリチリと痛む喉に、冷たいままの味噌汁を流し込む。
小さく作ったおにぎりは半分も食べきれずに、風邪薬を飲んで早々に布団に戻る。
「うー……」
唸ったってどうしようもないことはわかっている。
風邪なんてここ数年引いていなかったし、熱の怠さに加えて孤独感が込み上げてくる。
眠りたいのに、眠れない。
「……っ、そうた」
泣いたら余計に寂しくなるのに、我慢できなかった。
昔、おばあちゃんの家で風邪を引いたとき、来ちゃだめって伝えたのにこっそりと部屋に忍び込んだ碧汰のことを思い出す。
自分の家から持ってきた、思いつく限りの食べやすいものをどっさりと抱えて。
寂しさと心細さで泣いてしまうわたしのそばに、いてくれた。