なつの色、きみの声。


「あ……」


大きく目を見開いて、ガードレールを跨ぎこちらへと駆けてくる。

戸惑って横や後ろを振り向くけれど、この道にわたし以外の人はいない。

再び男子がいた方を向くと、もう目の前に立っていた。


「な、なあ! もしかして、相模海琴?」
「え……なんで、名前」


わたしのフルネームを発したことに驚いて、反射的に身構える。

近くで見ても、この人の顔に見覚えはない。


「ごめん、ビビらせて。人違いだったら悪い。天斗のことは知ってる?」
「大宮くんのこと?」
「そう! 俺、天斗の友だち。中山透夜」


初対面だというのにやけに馴れ馴れしく、自己紹介をすると握手を求めるように手を差し出された。

その手を掴むことなく、警戒を解かずにいると、困ったように笑って手を引っ込めた。


「本当にごめん。突然話しかけて。でも俺、怖くないから安心して」
「うん、怖くはないよ。驚いただけ」
「俺完全に不審者だもんな。前にさ、天斗のバイト先に行ったことがあって、同い年っぽい子もいるんだなって聞いたときに名前を教えてもらったんだ」
「大宮くんが素直に教えたの?」
「名前何?って聞いたら普通に教えてくれた」


大宮くんなら、関係ないだろって切り捨てそうなイメージだったから、名前を教えたことが意外で聞いてみた。

仲がいいと紹介したわけではなくて、単に聞かれたことに答えただけだとわかって肩を落とす。


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