虹色のラブレター
電車を降りて、僕の家までの夜道を二人で並んで歩いた。
駅の周りは明るかったが、一つ角を曲がると、ここが田舎であることがすぐにわかる。
車の走る音が聞こえ始めて、片側一車線の小さな国道を横切ると、静かな住宅街に入る。
時間はまだ8時を過ぎたくらいだったが、人通りはほとんどなかった。
「お父さんとお母さん居る?」
『たぶん居ると思うけど……何?』
「挨拶とかした方がいいよね?こんな時間に大丈夫かな……」
千鶴は心配そうな口調で言った。
『大丈夫だよ。ガレージから車を出すだけだから。もし、出てきたら適当に挨拶しとけば』
僕は笑いながら言った。
「そう?」
だけど、千鶴はやっぱり不安そうだった。
僕の家は、ガレージと家が一緒になっていて、一階の半分がガレージでできていた。
僕は、そんな千鶴に気遣って、家には入らずにガレージを開けた。
シャッターを開ける音が、暗い住宅街に響いた。
すると、玄関の扉が開いて、母がそこから顔を覗かせた。
「あら、智?何?帰ってきたの?」
『あ、うん。車を取りに来たんだ』
「それはいいけど……ちゃんと仕事行ってるの?」
『行ってるよ』
「今晩は?帰ってくるの?」
『ううん。しばらく帰らないから。でも、ちゃんとやってるから……』
「智……昔みたいに……」
僕は中学、高校と……ろくに学校にも行かずに荒れた時があった。
母はきっと、その頃のことを言っているのだ。
『大丈夫だって。俺だってもう社会人なんだし』
「そう……ね。あの……そちらさんは?」
母は僕と話しながらチラチラと千鶴の方を見ていた。