虹色のラブレター


『そうだね。でも……』


僕が言いかけた言葉を遮るように、千鶴が言った。


「ううん、いいの」


僕は横目で千鶴の方を見た。

彼女の横顔が、国道沿いのホテル街のネオンで、ほのかに明るく照らされていた。


「ねえ」


『何?』


「私、ホテルにも行きたいって言ってた」


『うん。覚えてるよ』


一瞬、時間が止まったかのような間隔を置いて、千鶴は言った。


「今から行く?」


『え!?』


車は国道の両脇沿いに建ち並ぶ、ホテル街の真ん中を走っていた。

この区間だけが異常に明るかった。

建物のほとんどが、ピンクを基調とした妖艶なネオンで彩られ、まるでここだけが別世界のような独特の空間を作りだしていた。

僕は、千鶴の言う「ホテル」とは、美貴と泊まったようなビジネスホテルか何かだと思っていた。

でも、それは僕の勘違いだということに、この時、気付いた。

今、僕たちが走っているのは、ラブホ街の中だった。




< 159 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop