虹色のラブレター
「無理やりね……連れていかれたの……」
エンジンをかけたままの車の低いアイドリングの音に混じって、千鶴の声が聞こえた。
『え?』
僕が千鶴の肩に手を置いて体を離そうとしても、彼女は僕から離れようとせずに抱きついたまま、僕の胸に顔を埋めて言った。
「学校の帰りに……」
その時、僕は全てを悟った。
『まさか……この前の知らない人に追いかけられたって……そいつに!?』
「同じ人なのかはわからない……でも、車に乗せられて……知らないアパートに連れ込まれそうになって……」
千鶴はそこで一度言葉を詰まらせた。
「部屋の鍵をあけようとしてる隙に逃げ出したの……夢中で走ってたら丁度タクシーが停まってたから……」
『それで……ここに来たの?』
「うん……。まだ智が職場に居る時間だと思って……」
千鶴の体は震えていた。
まだ溢れ出しそうな涙を懸命に堪えながら……。
僕はそんな千鶴をもう一度強く抱き締めた。
徐々に込み上げてくる怒りで、僕は自分の感情をコントロール出来ない状態になっていた。
『そのアパートの場所……わかる?』