虹色のラブレター
僕たちは無言のまま、だけど、車は真っ直ぐに国道を走り、前にも一度千鶴と一緒に通ったホテル街にさしかかった。
千鶴は俯いたまま、そして、僕はまだ迷っていた。
だけど、千鶴は悪くない。
ホテルに泊まるという約束は二人でした約束だ。
なのに、それを僕が勝手に……
これほどまでに千鶴のことを好きになって、泊まることは出来ないと思っているだけなのだ。
ホテル街のネオンに照らされて、車内が一瞬明るくなった。
千鶴は俯いたままだった。
僕は左折のウインカーを出した。
それに気付いた千鶴は顔を上げて僕の方を見た。
その瞬間、車内がパッと明るくなった。
千鶴と目が合った。
彼女の目の縁に涙が溜まっているのを僕は見た。
千鶴はすぐにまた俯いた。
彼女の涙の理由はわからなかった。
だけど、僕は左手を彼女の膝の上に伸ばし、そこに置かれた彼女の手をそっと握った。
千鶴の手は熱を持っていた。
そして、小さく震えていた。
僕はその震えを抑える様に、彼女の手にギュッと力を込めた。
それが今の僕に出来る精一杯の優しさであり、千鶴への気持ちの伝え方だった。