強引上司の溺愛トラップ
「……妹?」

早太くんの背中が小さくなった頃、課長がとなりで呟くようにそう尋ねてきた。課長の顔を見れば、かなりバツの悪そうな顔をしている。


「は、はい。今のは私の一番目の兄で……」

「マジか……」

「あ、でも大丈夫です! 兄としては、そういうつもりがあって、わざとああいうことをして、その」

「そういうつもり?」

「あ、その」


えと、何て言えばいいんだろう。
早太くんは、私が勇気を出して課長に告白することが出来るようにあんなお芝居をしてくれた。
なら、私が素直に課長に気持ちを伝えてばいい話で、私もそうするつもりだ。
でも、何て切り出したらいいのかが分からない。

ていうか。


「あの、千鈴さんは……?」

私がそう尋ねると、課長は「ん?」と短く答えてから。


「元々呼んであったタクシーがちょうど来たから、突っ込んで帰らせた」

「突っ込ん……い、いいんですかそんな雑で? 一応、縁談のお話がある方だし、それに……」

そこで口ごもってしまった私の言いたいことを察してか、課長はまっすぐに私の目を見た。


「……見たよな、キス、してたとこ」

いきなり核心を突かれて、ドキンと心臓が跳ねる。


「は、はい。で、でも明らかに千鈴さんの方からいきなりしていたのも見てました」

「でも、逃げたじゃん」

「それは、その……すみません……。だいぶ、かまってちゃんになってしまいまして……」
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