嘘つきな唇
短い沈黙。
マンションの廊下に私の鼻をすする音だけ響いていた。
「とりあえず泣かれてたら恥ずかしいから中に入って、落ち着いてから話そうぜ?」
そう言われて
頷きかけた時
隣の部屋のドアが静かに開いて
財布片手に出てきた相川が私達を見て目を丸くしてかたまった。
上司として絶対に部下には見られたくない場面…。
泣きながら視線を落とした私に気づい大雅が私を部屋の中に入れようとしたから
開きかけたドアを勢いよく閉めて
今度は大雅の手のひらに
指輪をのせた。
「大好きだったよ。ちゃんと、彼女を大切にして
幸せな家庭を築いてよ…?」
見られたくない場面だけど
もともと相川は知ってる。
このまま知らないフリして通り過ぎて欲しいという願いが届いたように
相川は視線を落として
私達を見ないように横切って行った。