嘘つきな唇
煙を胸いっぱいに吸い込む頃には涙はとまっていた。
終わらせれなかった頃は
いつも後悔と愛おしさで涙が止まらなかったのに
自分からさよならを告げてしまった後は
もう泣けなかった。
煙草を消してベランダに出ると
直ぐに隣の部屋の窓が開いて相川が出てきた。
「出かけたんじゃなかったの…?」
「そのつもりだったけど、あんな場面見ちゃったら気になって…
マンションの入口で様子を伺ってたらあの人が帰って行ったから…
戻ってきました。」
「私の事なんか気にしてくれなくていいよ。用事あったなら行きなよ。」
「コンビニに缶ビール買いに行こうとしてただけですし…
…
けっこう、イケメンな人でしたね?」
「私、面食いだから」
笑う私に、相川は顔を引きつらせた。
そんな相川に「待ってて」と告げると
私は急いで部屋の中に引っ込んで
冷蔵庫から缶ビールを取り出し相川に渡す。
「貰ってもいいんですか?」
「今まで愚痴を聞いてくれたお礼」
今なら素直にそう言えた。