中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました

「ろ、ロビーで大丈夫ですか?」
「ロビーに行きたいところなんだけど、四階でお願いします」
「お疲れ様です……」

まだこの人働くんだ……そのことに少し驚いてしまったが、私はすぐに四の数字を押した。
ブラックの缶コーヒーを持っている手はとても大きく、シャツは一つの皺も無いし、声は穏やかなのにどこか色気がある。
もしかして、と思い胸ポケットに入っている社員証をチラッと見ると、『真塩』という文字が見えた。

「なるほど、この方が噂の……」
「え?」

え、待って、今私声に出してた? 嘘でしょう?
私はすぐに口を手で覆ったが、時すでに遅し。
頭一個分高い位置から、塩顔イケメンと噂通りの彼が、驚いた様子で私を見下ろしていた。

「噂? どんな噂されてんの俺、怖いなー」
「あっ、いやあの、決して悪い噂ではなく、むしろ完璧すぎて怖いみたいなそんな感じの噂でして……っ」
顔を真っ赤にしながら必死に否定すると、彼はくっと喉を鳴らして笑い、疑う様な視線を私に向けた。
「本当に? 女子の噂って怖いからなー」
「いや本当です本当です、今日のお昼なんて真塩さんの良い所しか聞かなかったですし……っ」
手をぶんぶんと横に振りながら否定していると、エレベーターが四階に止まった。良かった、やっとこの息が詰まる様な空間から解放される。
そう思った瞬間、お昼から続いていた胃の痛みがマックスになり、私は胃を押さえてその場に崩れてしまった。

「おいどうした、大丈夫か!?」
「す、すみません、朝から胃が痛くて……」
「ちょっと一度降りよう、ほら腕掴んで」
< 4 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop