中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
なんてことだ、史子、ごめんなさい……。
私情で一切絡まないとか言っておいて、初回からこんなに迷惑までかけてしまった。
私は彼の腕を掴まれながら、ずるずるとエレベーターから降りて四階の休憩室に向かった。
「なんか薬とか持ってる?」
「はい持ってます……でも水が無くて。この階自販機ありましたっけ」
「あるけど今全部調製中みたいだ……」
「あ、本当ですか、じゃあもう舐めますね」
「おい待て待て待て、それ水無しでいけるやつじゃないだろ!」
顔面蒼白のまま、潔く薬を口に入れようとしたら、真塩さんに思いきり止められた。
それから、ぐっとペットボトルを押し付けられ、乱暴に命令された。
「飲め、ほら!」
「あ、ありがどうございまず……」
判断力が鈍っていた私は、何も考えずにその水で薬を飲みほした。
彼はなんとも言えない表情で、私を見つめている。
その表情に疑問を抱きながら、再び御礼を言って水を返そうとした時、私はやっと事態を理解した。
社内ナンバーワンイケメンの真塩さんと、間接キスをしてしまった。
死刑だ。もしこの状況を誰かに見られたりしていたら、私は間違いなく死刑だったであろう。
ペットボトルを持つ手がガタガタと震えだし、私は全力で真塩さんに土下座したい気持ちでいっぱいになった。
そんな私を見て、真塩さんはゆっくりと形の良い唇を開く。
「……なあ、お前柔軟剤何使ってる?」
全く脈絡のない質問に、私は一瞬言葉を失った。
「……えっと、どういうことでしょうか……全く質問の意図が見えないのですが……因みにレノノです」
「まじかよ俺と違うな、じゃあなぜだ?」
「なにがなぜですか?」
頭の上に思い切り疑問符を浮かばせながら問いかけたが、彼も私と同じように首を傾げていた。
彼は暫しうーんと唸りながら、私が先ほど口をつけたペットボトルのキャップを再び緩めた。
そしてそれを私の顔の前に持ってきた。