Uncontrolled(アンコントロールド)
「それ、一番肝心なところだよね。タイミング良くフリーだから、もし一彰が悪さしたら俺が慰めてあげたいから、星名ちゃんの次の彼氏候補に入れておいてくれない?」

ぱちりと左目を瞬きさせて、くったくなく笑う。さりげないウインクがサマになっていて、高校時代、教室の窓からグラウンドを見つめていた頃の自分を思い出す。揃って180センチを超える長身に、爽やかな甘いマスク。授業そっちのけで、飽きもせずに目で追っていた。

「そんなこと軽々しく言うと、女の子はすぐに本気にしちゃいますよ。実は、一彰から一緒に暮さないかって打診されてるんです。彼、真面目だから、結婚を視野に言っていると思うんです。私も年齢を考えたらちょうど良い頃かなって思っているし、だから、せっかくですけどお受けできません」

例え冗談でも、魅力的な異性から好意を寄せられるのは嬉しい。けれども、それを上手にかわせるだけの年齢になっているし、自分の器量は理解しているつもりでいる。男性だというのに、ただそこにいるだけでぱっと花が咲いているかのような華やかさを持ち合わせている朝倉とでは、釣り合いというものがある。一彰は、いわゆる中肉中背で、誠実な人柄とどこかノーブルな雰囲気を星名は気に入っている。

「星名ちゃんは、ちょうど良い年頃だからって理由で結婚するの? それとも一彰だからそう思うの?」

からかい口調の割に、意味深な眼差しでじっと見つめてくる切れ長の双眸に、星名は一瞬たじろいでしまう。

自分の中で恋愛のピークが過ぎているのは分かっている。きっと一彰もそれは同じだと思う。とはいえ、だからこそ結婚が近付いてきているのではないかとも思う。一彰への想いは、もとから激情を孕んだものではなく、ずっと穏やかなものだ。そのことも、彼を結婚相手として考えている一つの要素と言えるが、それを周囲に言うのは躊躇われてしまう。まるで、恋愛と結婚は別だと言っているようなもので、けれども星名は、その二つは同列であってほしいと願っているから。

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