Uncontrolled(アンコントロールド)
「勿論、一彰だからですよ」

そう言っておきながら罪悪感に駆られ、作った笑顔が一瞬引き攣った気がする。朝倉は洞察力に長けた男だから気付かないという事はないだろうが、ふうん、と鼻を鳴らすに留まる。

「あいつは幸せものだな」

彼が手に取ったグラスの中の氷がカランと音を立てて回る。

「……航平の近況でも聞いてくるかなと思ったけど」

ほっとしたのも束の間、今度こそ、星名の左眉がぴくりと痙攣する。

何てことはない、と心の中で思えば思うほど意識してしまい、どんな顔をして良いのかも分からなくなってしまう。惑うまま伏せていた視線を上げると、朝倉の肩越しに、ちょうど角を曲がってきた一彰の姿を見つける。次の瞬間には彼も星名に気付いて、もう何度もそうしてきているように、当然のことのように微笑んできたから、星名もまた微笑み返す。その頃には、後ろめたさも消えていた。

朝倉と別れた後、一彰は星名をホテルに誘った。
いつの間にか出来上がっていた暗黙のルールでは、身体を重ねるのは週末と決まっていたが、疑問に思いながらも拒むことはしなかった。

ドアが閉まると同時に抱き寄せられ、呼吸もままならない激しいキスをされる。
両手首を壁に抑えつけられて、開かされた両脚の間には、一彰の片膝が割り入っている。
体温の上昇に合わせて、ほのかにアルコールの匂いを感じる程度で、酔うほど飲んだ訳ではない。なのに、彼の中にここまでの情熱が存在していたのかと改めて思わされるほど、吐息から何から何まで、奪われていく。

学生時代の、もう10年以上前のこととはいえ、同僚の元カノと知って、嫉妬をしているのだろうか。

考える隙を与えないほど追いつめられて、無慈悲な法悦にこれでもかと劣情を引き摺り出される。甘受しきれない快楽に、いつ意識を手放したのかさえ覚えていなかった。

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