Uncontrolled(アンコントロールド)
「いやぁ、今のは誰でも気付くでしょ。特に意識して見ている訳でもないんだけど、そういう情報って例え目の端でも気付いちゃうっていうか」

「それって、無敵ですよね。相手が何を考えているのか、求めているのかが言われなくても分かるってことは、恋人にとっては嬉しいことですよね」

「でもさ、それでもしてあげられないこととか、したくないこともあるから、それはそれでジレンマではあるけどね」

「逆に、先輩みたいに気付ける人って、俺はここまでしてんのにおまえは何なのって思うこともあるんじゃないですか」

「星名ちゃん、いいとこ突くよね。だからなのか、俺の恋愛って、尽くして尽くして、んで最後振られんのがパターン」

お通しの煮びたしに箸を向けながら首を竦める彼を見て、そういう事もあるのかもしれないと思うと感慨深い。朝倉クラスの男であれば、あれこれ世話を焼きたがる女性は後を絶たないだろうに、そこを敢えて自分が尽くしたいのか、もともと情が深いのか。過去にそういった男性と巡り会ったことがない為、想像しづらい。

「確かに、相手がパーフェクトだと息苦しくなるっていうか、自分は全然返せてないことに不安の方が大きくなるのかもしれませんね。でも、私は羨ましいですけどね。なんで、自分もしてあげなきゃとか、してあげたいって、その子たちは思えなかったんだろう」

「それは、俺が甘やかしすぎちゃったんでしょ。たぶん、俺がすることは何でも当然って感じに思えてきて見縊られちゃうんじゃないかな」

180センチを超える長身に、精悍な顔立ち。センスの良いコーディネート。少し茶色がかった髪は額の上で柔らかそうにウェーブを描いていて、それに触れてみたいと妄想する女性社員が勤務先にどのくらいいるのだろう。三十路を前にして、大人の男の色香と余裕を見せつけてくるのに、そんな弱音を吐いてしまう彼を可愛いらしく思えた。

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