Uncontrolled(アンコントロールド)
「……ですね」

「え? 何?」

星名がぼそりと溢せば、伺うように身を乗り出してくる。必死な男の姿を見るのは楽しいと、少しのSっ気が湧いてくる。

「先輩、ヘタレですか。昔の先輩はもっとかっこよかったのに!」

声を露わに言い切ったあとでさすがに言い過ぎたかと後悔したが、朝倉は落ち込む訳でもなく、どこかニヒルに達観したような遠い目をして吐息を吐く。

「イイ男がイイ男ぶってたら、世間は渡っていけないのよ、星名ちゃん。イイ男だからこそ、汚れ役だって何だって率先してやらなきゃならない時もある訳。故郷を離れて、早10年。都会の波に揉まれて揉まれてこうなりました」

大袈裟に首を竦める姿に思わず笑ってしまいそうになるが、ぐっと堪えてしれっと返事をする。

「こうなりましたって、イケメンなりに苦労があるとアピールしただけですよね」

「そうだけど、それが何か?」

ツンと澄まして、然る大女優の名言を再現してみせた朝倉に、星名はとうとう噴き出す。こういうムードメーカーなところに、何度助けられただろう。

「私、先輩のこと好きですよ」

「俺も星名ちゃんのこと、大好き。じゃあ、仲直りの印に、日本酒いっちゃおうか」

「いいですね。実は私、飲める口なんです」

「わぁ、強そうだね。俺、端から負けそうだわ」

その後、飲み比べと称して次々と日本酒を注文していき、会計をする段階になって二人して青ざめた。

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