Uncontrolled(アンコントロールド)
3
朝倉と一線を越えた週明け。もう週も半ばの水曜日だというのに、星名はまだあの夢のような時間から抜け切れずにいる。少しでも気を抜いてしまえば仮にも仕事中とはいえ、濃密だった閉じられた空間での出来事へと意識が引き戻されてしまう。

数日経ったとはいえ、まだありありと朝倉の熱や感触が肌の表面や内側に残っていて、その時のことを少しでも思い出すだけで、身体の奥底からはしたないくらいに濡れてくる。

恐らく、彼の部屋で身体を重ねていない場所はないというくらい色んなところで、表になったり裏になったりして、よりお互いが深く繋がることができる形を探して求め合った。次に朝倉のマンションを訪れた時には、きっとどの場所に立っても思い出して赤面してしまうだろう。

朝倉とは、一晩限りと割り切っているからこそ自分の全てを曝け出せた、というような間柄ではない。
ましてや、お互いをよく理解し合っている付き合いの長い恋人という訳でもない。

旧知の仲とはいえ、恋人の同僚でもある相手と秘密の関係を持ってしまったということは、自分自身の行動も含め、俯瞰して物事を見る習慣がある星名らしくはない行動ではあったが、抗うという選択肢は自分の中のどこを探しても見つけることはできなかった。あの甘い誘惑を経験すると、世の男性が言う、据え膳食わねば……の意味がすんなり理解できてしまう。

朝倉の絶倫さにも舌を巻いたが、それにも増して、彼に求められればすぐに順応して身体を濡らす自身の貪欲さには何度も驚かされて、その都度裏切られた気分にもなった。焦らされて、欲しがらさせられて、唆されるままに何度も彼を強請った。

キッチンから寝室に連れていかれたベットの上で、もう何度目か分からない絶頂を経て気を失っている間に、途中のままにしてあった朝食を朝倉が仕上げてベットまで運んできてくれた時は、甘やかされているとさえ感じた。星名はひな鳥のように口を開いて待っていればいいだけで、朝倉がサラダのトマトやスクランブルエッグをフォークで口元に運んでくれた。

食事が終われば、会社携帯だけ残してプライベート携帯は電源を落とすように言われて、疑問には思ったもののまだぼんやりしている思考では上手く考えられず、朝倉が自身の携帯を目の前に掲げてやって見せたように、星名もそれに従った。

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