有害なる独身貴族
「気遣いなんていらないんです。私は別に彼氏とかいらないんです。ただ、食べてさえいければ」
どうしてこんなにイライラするの。
余計なことだとは前から思っていたけれど、店長が私のことを考えてくれた事自体は、いつだって嬉しかったのに。
言葉がだんだん荒くなる。
店長にあたったって仕方ない。
私が愛されなかったのは、店長のせいじゃない。
なのに感情が爆発する。
「私のことなんて、放っておいてくれたらいいんですっ。心配される価値なんて無いんですからっ」
両親に愛されない私。
愛してくれる人を死なせてしまった私。
大切な人に憎まれた私。
八つ当たりなんて贅沢なことをする資格、私には無いのに。
唯一の居場所をくれるこの人に、どうしてこんなふうにあたってしまうの。
パンと弾けたような音とともに、頬に痛みが走って思わず目をつぶった。
しびれたような痛みが収まる頃にそろそろ目を開けると、眉をよせた片倉さんが私を見据えている。
「自分を卑下する奴は嫌いだ」
「……片倉さん」
「着替えてこい」
私がうなだれてうつむいていると、事務所に戻った片倉さんが何かを出してきて私の頭にのせる。
ひやりと冷たくて、思わず手に取ると、それは私が前に渡したペンギンアイマスクだった。
「ついでに頭冷やして来い」
「……はい」
ペンギンを目元にあてて、事務所に入って鍵を閉めた。
着替える気力がわかず、ソファに座り込む。
ひんやりとしたアイマスクが、ヒリヒリした気持ちも冷やしてくれるのか、今度は途端に悲しくなってきた。