有害なる独身貴族
「つぐみ?」
名前を呼ばれて、店長を見上げる。
深く澄んだ瞳。顔は歳相応の小さなシワが見える店長も、瞳だけは少年のように綺麗だ。
それが、今はとても苛々する。
「どうして、……子持ちの人と付き合ってて、どうして結婚しないんですか?」
店長は驚いたように私を見つめ、そして目を伏せて答える。
「付き合うっていうか……茜とは友達だ」
「嘘、だって昔」
数家さんと店長と三人で飲んでて、「彼女も呼ぶから」と言って茜さんを呼んでは抜け出して行った。すごくゴージャスな衣装で来られたから印象深くて……って、よく考えたら、アレは仕事中の茜さんを呼びつけてたってこと?
「昔、……彼女だって紹介してくれたじゃないですか」
「……あれは、なんだ、その、お前と光流を二人きりにさせてやろうと思って。抜けるのにはそう言った方が聞こえがいいだろう」
なんだ。じゃあ茜さんとは何でもなかったの?
ホッとした反面、二人の親しげな態度を見てれば、全く何もないわけじゃないということは分かる。
大体、四十の男と三十代の女の友情とかって成り立つものなの?
頭のなかで疑惑が膨らんでいく。
付き合ってるんだって思い込んでた時は素直に諦められてたのに、なんでここでこんなに苛々するんだ、私。
「……なんで店長はそんな余計な気ばっかり回すんですか」
「なんだよ、余計とは失礼だな」