有害なる独身貴族
「だって、片倉さんが悪いんじゃないですか」
「まあそうだけどさ。光流に続き、つぐみにまでキレられるとは思わなかった」
しっかり話しているけど、呼吸は荒い。
まだ飲みきっていない風邪薬があったはず。
私は一度立ち上がり、小さな薬箱から風邪薬を探しだした。
グラスに水を入れ、薬と濡れタオルを持って戻ると、まだ半裸の片倉さんが私の足の絆創膏の辺りをじっと見ている。さっき膝を打ち付けたので再び血が滲んでいた。ワンピースの裾にも血がこびりついている。
「つぐみ、膝どうした」
「あ、転んでしまって」
「服、汚れちゃったな。似合ってたのに」
体を拭き終えた彼は、そのまま上に羽織っていたシャツの方を着込んだ。
Tシャツの方はまだ湿っているのだろう。拾い上げ、とりあえずハンガーにかける。
「洗えば落ちますよ。少しくらい痕が残るかもしれませんが、私は気にならないので問題ないです」
「そうか」
「大事な服なので。大切に長く着ます」
片倉さんがくれたものだ。
もしこの先、太ったり破れたりして着れなくなってもとっておく。
「薬飲んだら寝てください」
聞きたいことは話したいことはたくさんあるけれど、体調を治してもらうのが先だ。
片倉さんは逆らう気を失ったのか、私の言うとおりに動いてくれた。