有害なる独身貴族

「ってぇ!」

「いい加減にしてください! 私の気持ちも考えてくださいよ」


怒鳴りながら涙が浮かんでくる。
片倉さんは頬を抑えたまま、私を食い入るように見ていた。


「私だって、片倉さんが心配なんです。熱があるなら休んでください。私に看病させてください。私をっ」


そこまで言って、涙は決壊した。


「お願いだから私を必要としてください」

「つぐみ」


片倉さんは、困ったように立ち尽くしていた。肩は浅く上下して、息も荒くなっているのに、泣きじゃくる私をどう慰めようかと手が右往左往する。


「とにかく、入ってください」


鍵をあけ、中に招き入れる。
右腕を引っ張ったら、今度は素直に動いてくれた。

朝からワンピを着るのにテンパっていた私の部屋は、お世辞にも綺麗だとはいえなかったけれど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。

ベッドを整え、横になってもらう。
熱があるなら着替えか、と思うけど、残念ながら私の部屋に片倉さんに合う服はない。
かといって脱いでくださいとも言えないので「汗拭いてください」とタオルを渡した。


「……今日はよくキレられる日だ」


手を突っ込んで拭くかと思いきゃ、いきなりシャツとインナーのTシャツを脱がれて、驚いて背中を向けた。
男の人の裸なんてマトモに見たことがない。
ドキドキして、声が上ずってしまう。

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