有害なる独身貴族


 事務所の扉をノックをすると、すぐに「どうぞ」と返事が来る。


「入りますよ」


中では、仕事着に着替え終わった数家さんがパソコンの前に座っていた。


「試食会自体には給仕で何度か参加したことあるよな。そろそろセッテイングの方の仕事を覚えていこうか」

「はい」

「ちなみにコンピューターの使用経験は?」

「以前の職場で、入力業務を二年位してます」

「お、凄いじゃん。じゃあ入力とかで手こずることは無いな」


数家さんは安心したように画面を見せてくれた。
そこには、ご案内の文章がある。


「モニターの方に送っているのは、案内状とチラシ。チラシは後で俺が写真とかと合成するから、とりあえず今日は案内状作ってくれるか? 時候の挨拶とメニューのところを直して、今回の限定メニューのコンセプトみたいなものを書いてくれればいい」

「彩り夏野菜ってとこを強調すればいいんですかね」

「そうだな。今回は房野と相談してメニュー決めたって店長が言ってたから、その時の経緯を踏まえて考えてみて」


あれは相談だったのか?
なんか思いつきで決まったって気がしたけども。

まあいいや。


「分かりました」

数家さんが席を変わってくれたので、デスクに座りディスプレイとにらめっこしてキーボードを叩く。
こうやって真面目に文書打つのって久しぶりだけど、昔とった杵柄と言おうか、あんまり悩まずできるものだな。
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