有害なる独身貴族

「痛って。あれ、店長可愛いっすね、これ」

「おう。いいだろ。やらんぞ」

「あー、さては彼女さんからもらったんでしょう。なんだっけ、茜さん?」

「うるせぇな。とっとと仕事しろ。光流を手伝ってこい」

「はーい」


頭をかきながら店内に向かう上田くん。
これは、助けてくれたのかな。

と、店長はアイマスクを私の頭の上に乗っけると、背中を押して事務所に放り込んだ。


「お前も着替えろ。あと、ペンギン、事務所の引き出しに入れといて」

「はい。あの、これは……」

「俺にだろ? サンキュな」


ちゃんと、お礼に気づいてくれた。
口をパクパクさせている間に、ぱたんと事務所の扉が閉まる。


「つ、使ってくれますか?」


ドア越しにようやく出た言葉に、「もちろん」という返事が聞こえた。


顔から上がっていく熱が、頭の上のペンギンアイマスクによって冷やされていく。

ヤダもう。
なんでこれだけのことがこんなに嬉しいんだ。

< 95 / 236 >

この作品をシェア

pagetop