有害なる独身貴族
「痛って。あれ、店長可愛いっすね、これ」
「おう。いいだろ。やらんぞ」
「あー、さては彼女さんからもらったんでしょう。なんだっけ、茜さん?」
「うるせぇな。とっとと仕事しろ。光流を手伝ってこい」
「はーい」
頭をかきながら店内に向かう上田くん。
これは、助けてくれたのかな。
と、店長はアイマスクを私の頭の上に乗っけると、背中を押して事務所に放り込んだ。
「お前も着替えろ。あと、ペンギン、事務所の引き出しに入れといて」
「はい。あの、これは……」
「俺にだろ? サンキュな」
ちゃんと、お礼に気づいてくれた。
口をパクパクさせている間に、ぱたんと事務所の扉が閉まる。
「つ、使ってくれますか?」
ドア越しにようやく出た言葉に、「もちろん」という返事が聞こえた。
顔から上がっていく熱が、頭の上のペンギンアイマスクによって冷やされていく。
ヤダもう。
なんでこれだけのことがこんなに嬉しいんだ。